鼓動のために

小説を書きました。

カンザキイオリ誕生日非公認有志企画 #BirthdaySHELF に参加した小説です。カンザキイオリさんによる楽曲「鼓動」をオマージュしました。

ごく平和的な「じゃあね」のシーン。……なのに、どうしてこんなにも、胸がつまされるのだろう。


「お話ありがとうございました! ——︎“冬也”先輩」


そのまま、後輩は部室から出ていった。


……書けない。

書けない。

書けない。書けない。書けない。書けない。

その時の俺の心境は、今の俺にとってさえ、重くて、苦しくて、筆舌なんかには尽きるわけもないそのどうしようもない気持ちを、ここに書くことなんかできない。

俺は、書けない!!!

書けなかった!

今だって書けない。その時だって俺は俺の思う小説が書けなかったし、今だった俺は書けない。どうすればいい。どうすれば俺は正解だったんだ。

その時の俺は今の俺と全く同じように、じわじわ、じわじわとパニックに陥っていった。夕方のことだった。夕日がいやらしい角度で薄暗い光を部室に差し込んでいて、そのことが俺の両手を苛立たせた。俺はパイプ椅子から立ち上がり、机の上にあった原稿用紙の山に手をかけた。


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